外国人患者が病棟に来たことはありませんか?
言葉の壁はもちろん、文化の違いから思わぬトラブルが発生することがあります。
私は、何度か薬のことで、ヒヤっとしたことがありました。
薬って国によって色々違いそうですね。
そうなんだよね。薬の種類もそうだし、薬に対する考え方も違うなって思うこともあるよ。
外国人患者に特に気を付けたい薬
坐薬
日本人には、普通に受け入れられている坐薬。
ですが、この坐薬、外国人患者に使う時には注意が必要です。
坐薬もいくつか種類がありますが、レシカルボン坐剤やテレミンソフトを使っているところが多いのではないかと思います。
病棟では略してレシカル、テレミンなんて言ったりしますよね。
ある時、排便が数日ないフィリピンの患者さんにレシカルボン坐剤を持っていきました。
しかし、丁度その時ピッチが鳴り、少し目を離してしまいました。
すると、
ん?患者さん、何か準備をしているな・・
と思っていたら、なんとお水で坐薬を飲もうとしていたのです。
事前にお尻から入れる薬であることを伝えていたつもりだったのですが、上手く伝わっていなかったようでヒヤっとした出来事でした。
日本人患者さんの場合、説明がなくてもこの形状を見れば、「坐薬だな。お尻から入れる薬だ」と想像がつくことが多い様に思いますが、外国人患者にはなじみのない薬剤だったりします。
今回のフィリピンの患者さんは今まで坐薬を入れたことがなかったみたいで、改めて説明すると、
えぇ!?お尻から?
という少しびっくりした反応でした。
フィリピンのお薬事情を調べると坐薬は市販薬でも普通にあるようですが、あまりなじみがなかったようですね。
また、日本では割と坐薬は一般的のように思いますが、外国人は拒否反応を示す人は多いようです。
坐薬についての外国人の反応を調べてみると、
・外国人は坐薬を非常に嫌がる傾向がある
・即効性があるからと坐薬を勧めると、なぜかアメリカ人は絶対に拒絶
・坐薬を実際に飲んでしまった
など書かれていました。
しかし・・!!日本人でも間違えて飲んでしまったって人もいるようです。
ですが、外国人患者に坐薬を使う時には、このような間違いが起こることが多いので、より注意が必要です。
ちなみに、坐薬を飲んだらどうなるか・・ですが、
『直腸から吸収されるべき成分が胃液など内分泌液によって分解されるので効果が殆どなくなる』
ということの様です。
ピル
入院すると、患者に持参薬を提出してもらうことになります。
以前、外国人患者から持参薬を預かった時に、ピルが持参薬として出されなかったと気付かなかったことがありました。
日本人は割と少数ですが、外国人はピルを飲んでいる人が多いです。
低用量ピルは海外ではどのくらい飲まれてる?
世界のピルの内服状況によると、
避妊法2019(Contraceptive Use by Method)
◆欧米諸国
ノルウェー25.6%、英国26.1%、フランス33.1%、カナダ28.5%、米国13.7%
◆東アジア
中国2.4%、香港6.2%、韓国3.3%、日本2.9%
◆東南アジア
ミャンマー8.4%、ベトナム10.5%、タイ19.6%、マレーシア8.8%、カンボジア13.7%
先進国である日本ですが、海外と比較してあまり普及していない理由として、入手方法が困難ということがあげられるようです。
海外では、薬局で安価で手に入るようですが、日本では産婦人科を受診しなければ手に入りません。
本題に移りたいと思います。
ピルは、有益性が高く海外では割と一般的なのですが、薬なのでもちろん副作用もあります。
まず、先に低用量ピルがどんな薬なのかについて触れたいと思います。
低用量ピルの効果
低用量ピルとは低用量経口避妊薬という正式名称の薬で、これには卵胞ホルモンと黄体ホルモンいう2つの女性ホルモンが含まれており、体内の女性ホルモンの量をコントロールしてくれます。
これによって排卵を阻止したり、受精卵の着床を防いだりしてくれるため、避妊効果が期待されています。
ピルによる避妊効果はとても高く、飲み忘れなどなければ99.7%の避妊効果が期待できるという報告があります。
更に、副効果といって、月経前症候群(PMS)の改善や、月経痛、月経過多の改善といった効果が期待でき、更に卵巣がんや子宮体がんのリスクを下げる効果もあると言われています。
こう見ると良いことばかりのように感じますが、薬なのでもちろん副作用があり静脈血栓症を起こし易いと言われています。
外国人は低用量ピルは薬と思っていない??
書いたようにピルは、薬なのでもちろん副作用があります。
病院では、患者さんから今飲んでる薬(サプリメントやインスリンなど含めて全て)とお薬手帳を全て一旦看護師が預かり、そしてそれを薬剤師へ渡している理由として、
・用法・用量は適切か
・同じ成分を含んだお薬が重複していないか
・飲み合わせなどの問題点はないか
・副作用歴、アレルギーや禁忌はないか
など確認が大事だからです。
しかし、ある時、こんな出来事がありました。
situation 日勤中
飲んでいる薬を全部預からせて下さい。サプリメントなども含めて全部です
わかりました、はいコレ
situation 夜勤巡回中
(うん..?なにかしてる?)どうしたんですか?
あ、今からピルを飲もうと思って。飲み忘れてたの。
飲み合わせの問題もあるので、それも預からせて下さい・・!
外国人患者さんが飲んでいたのは、28錠の偽薬(プラセボ)があるタイプ。
そして、その時は偽薬(プラセボ)期間だったので、一応大丈夫だったのですが・・。
ちなみに、偽薬(プラセボ)とは、
*偽薬(プラセボ)
➡28錠中の最後の7日間の薬はプラセボと呼ばれる偽薬。
偽薬にはピルの成分が含まれていない。あくまでもピルを飲む習慣付けや飲み忘れ防止のためにつけられている。
外国人患者さんは、静脈血栓が起こりやすい病気にかかっていたので、ピルを飲んでいたら更に静脈血栓を起こしやすい状態になってたのでまずかったのです。
外国人患者は、なぜ入院時にピルを渡さなかったのか?
本人には聞きませんでしたが、恐らくピルを習慣的に飲んでおり、薬という認識が低かったのではないかと思います。
私は、これまで日本人患者からピルを預かったことがありませんでした。
外国人の場合、日本人より高い確率で内服しているので要注意です。今後、ピルを飲んでないか確認しないとと思った1件でした。
外国人患者と日本人とでは、薬に対する意識が違う
疼痛の閾値が違う
外国人患者を応対していると、痛みの訴えが強いと感じることがあります。
疼痛は主観的なものなので、本当に我慢できないほど痛いのかもしれません。
しかし、どちらかといと日本人は少々の疼痛は我慢する傾向にあるように思います。
夜勤の時など、疼痛指示をもらってなかったり、何度もコールがあると困った事態になってしまうこともあります。
どうしよう・・疼痛指示もらってなかった。
今日の当直医は専門外だし指示もらいにくいな・・困ったな。
個人差はもちろんありますが、外国人患者の場合、疼痛コントロールは予防的にしておくといい場合が多いなと個人的には思っています。
まとめ
日本ではよくある薬剤でも外国人患者にはなじみがなかったり、文化的に受け入れがたいものもあるので、注意が必要のようです。
また、逆にピルのように日本人の服用率は低くても外国人患者さんは当たり前に飲んでいる薬もあるので、この点についても配慮が必要そうですね。
更に、痛みの訴えについても日本人とは違うなと感じることもあります。
・使用する薬剤の事前の説明と同意を得る
・使用する薬剤の拒否があれば、他の薬剤(代替薬)を検討する
・薬剤使用時には見守りを行う
・持参薬は入念に確認する
・予防的な疼痛コントロールを検討する
が大事なことのようです。
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